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【退職交渉における場面別のポイント】総合商社を辞めた経験を基に解説

退職交渉における場面別のポイント

前職時代(総合商社)の話。

とある日、毎週の定例会議終了後に、

「課長、お話したいことがあるので会議後に10分お時間いただけますか?」

と伝えるのに、ものすごく手に汗握ったのを今でも良く覚えてています。

既に心では退職を決意していたものの、お世話になった上司に人生で初めての退職を伝えるのには「申し訳ない」という想いもあり、それなりの勇気が必要でした。(この“想い”は非常に日系企業的なのかもしれないけど…)

会議後…

僕 「実は会社を辞めようと思っています。」

課長 「え、辞めるの?もったいなくない?(よくある一言)」

このやり取りから、実際に退職するまでに色んな考えを巡らせ、色んな人に色んなことを言われました。

今振り返ると、ごく普通の出来事だし、転職経験者からすると、「当たり前でしょ」と思われることも多いと思います。

が、当時の僕にとってはそれなりに大きな会社で高待遇である環境から飛び出すのは、個人的に非常に大きな決断でした。

今回はその経験を活かして、実際に退職するまでに何が起きて、誰に何を言われ、自分がどう考えたか、について書いてみたいと思います。

※キャリアは人それぞれなので、あくまで一例として興味のある方は読んでいただければと思いますが、以下のような人を想定して書いております。

  • 現在大企業勤務でいつか転職したいと思っている
  • 身近に転職者が少なく、退職時に何が起きるか分からない
  • 転職時の心構えを知っておきたい

今回は退職時に実際に遭遇した場面別に4つ分け、それそれの場面で意識するポイントを紹介します。

退職交渉の場面別のポイント

1. 上司の引き留め工作

まずは、熟考の末、転職するに至った経緯を課長に説明。

課長は真摯に最後まで話を聞いてくれ、且つこの場では最終的に「そうか、イシコの考えはよく分かった。まずは俺から部長に話しておくからちょっと時間をくれ」と言われ、その場で解散。

この時はまだ、これから始まる長い交渉があるとは夢にも思わず、「あ、意外とスムーズに進むかも?」と拍子抜けするくらいの感触を持っていました。

数日後、突然部長に呼び出され緊張が走ります。

もちろん、用件は「退職」についてだと分かっていたので、緊張しながらも2人で個室へ。

課長の時と同じように自分の想いを説明。但し2回目だったからか、意外と緊張もほぐれた状態でスムーズに話せているなと考えるくらいの余裕はありました。(今振り返ると、伝えるべきは「想い」ではなく、「断固たる決意」のみでしたが…)

部長「イシコの考えはよくわかった。俺も同じくらいの年代で会社を飛び出したいと思って動いた事がある。俺は結果的に残る選択をした身だから、飛び出した人の気持ちは分からないけど、イシコがどうしても飛び出したいなら”今じゃない”と思うよ。でもまずはイシコが飛び出してやりたい事を理解したいから聞かせてくれないか?」

僕「分かりました。できれば円満に退職したいし、お世話になった皆さんにも新しいキャリアを応援してもらいたいので、きちんと話します。」

とまぁ、こんな感じで話が進んでいきました。

そしてこの翌週くらいから、直属の上司や、隣のラインの上司などを含めた本格的な引き止め交渉が始まりました。

色々と言われましたが、箇条書きしてまとめると下記のようなコメントが多かったですね。

「転職は今じゃなく良いんじゃない?」

「まずは社内異動してみたら?行きたいところに行けるよう掛け合うよ」

「一度辞めると戻ってくるのは簡単じゃないから、よく考えて」

「そんな知らない会社に行って大丈夫?」
「イシコには期待していたのになぁ」

別に自分の退職をドラマチックに伝えたい訳でも、引き止め交渉が大変だったことを自慢したい訳でもありません。

むしろ、退職が全て決まって振り返ったときに、自身の退職交渉の仕方に大きな反省がありました。

今だから言えますが、上司と退職を交渉する時に僕が大事だと思ったポイントは3つあります。

  1. キャリアの考え方に関して他人に理解してもらう必要は無い転職をしたことがない人に転職の“相談”は無意味。
  2. 退職の意志を伝える時に「non-negotiable(ノンネゴ)」つまり「交渉の余地は無いこと」をハッキリと伝える。
  3. 反対だけする上司は、「自分の評価が気になるだけ(部下が辞めたらマイナス評価)」。一方でどれだけ揉めて反対していた上司でも、退職後に応援してくれる上司は、今後も付き合っていける良き相談者となりうる。※但し、これを退職交渉中に真意を図るのは簡単じゃない。

これを理解していなかったがために、一生懸命自分の想いや考え方を上司に理解してもらおうと努力したし、時には一緒に海外出張に行ったとき、時には夜中まで飲みに行ったとき、何度も何度も会話しました。

が、自分が翻意(退職を取り消す)しない限りは、この議論は平行線だし、上司にとっても自分にとっても不毛な時間だけが過ぎていくことにようやく気付き、最後に僕から上司へ伝えた言葉は、

「お気遣いありがとうございます。でも、これ以上どれだけ話しても退職の意志は一切変わりません」

自分も相手も傷つけたくないという一心から、長い間この一言が言えなかったのが最大の反省です。

結果的にお互い終わりの無い消耗戦を繰り返していたが、この言葉を皮切りに退職交渉は無事に終了。

2. 人事部との面談

無事に所属部署内で理解をもらい、後は事務手続きを人事部と進めて行くことになりました。

最初の面談では人事部長も出てきて、辞める理由を説明。

既に退職は既定路線だったため、引き止め交渉等は一切なかったが、人事部として「僕が辞める理由」については根掘り葉掘り聞かれました。

恐らく、退職理由を社内でもデータを蓄積して離職率を減らす努力をしていくんだと思います。

せっかくなので、色々と話を聞いてみましたが、人事部が一番気を揉んでいるのは「5〜10年目の社員の流出防止」だそうです。

3年目くらいまでに退職する人は、遅かれ早かれ退職する可能性が高いが、上記5〜10年目の世代は、誰しもが一度は外で勝負してみたいと思い始める時期。

ここで飛び出す人は、今の会社と飛び出す先の会社を冷静に天秤にかけて、後者を選ぶ決断をするので、人事部としては自社の魅力不足と考えているらしいです。

結局、人を縛れるのは「魅力」だけ、男女関係も、会社も。

余談ですが…

退職金はびっくりするほど少なかったです笑。

新入社員時の冬のボーナスくらい。これにはビックリしましたが、これは総合商社を辞めるデメリットの1つかもしれません。

また退職者が「有給の話とか、ボーナスの話は聞きにくい」という話をよく聞きますが、所属部署の上司ならともかく人事部はほとんど面識もないので、面と向かって確認しやすいです。

有給は極力消化して経済的空白を作ることなく、新天地での勤務前に英気を養いたいし、もらえるボーナスは退職するタイミングも関係しますので、人事部に正直に相談すると良いと思います。

これは会社の制度であり、従業員の権利でもあるので、人事部は意外と親切に教えてくれました。(営業部署でその類いの質問をすると、嫌な顔されそうですが…)

3. 周囲の声(友人・同僚等)

これは人によりけりだと思いますが、僕自身は転職活動中は友人には一切明かさなかったので全て事後報告でした。

というのも、友人に話したとしても、

「そんなに恵まれてるのにもったいない」
「イシコなら挑戦しても大丈夫だよ」

という2つの意見に集約されるのが目に見えていたからです。

案の定、全て手続きも終わって、社内外オープンになったタイミングで友人や同僚にも伝えたが、基本的には上記の感想が多いのを覚えています。

キャリアを考える上で、友人・同僚に相談するという選択肢はアリ(僕はやらなかったが)だと思ういますが、これだけは確実に言えます。

どんなアドバイスを受けても、キャリアを決めるのは自分自身であり、その決定内容について周囲は1ミリも責任を取らない(取れない)。

1つ意外だったのは、辞めた後に同業界の知り合いから、転職相談を受ける回数が増えたことでしょうか。

やはり社内で相談するのはリスクもあるから、辞めた人に話を聞いてみたいという潜在的な退職検討者はそれなりにいることが分かりました。

※今振り返ると、友人・同僚に相談しなくとも「メンター」のような方がいれば、相談すべきだったなと思います。利害関係のない(少ない)メンターがいる方はアドバイスを求めても良いかもしれません。

4. 身内の声

結論から言うと、身内の反対はゼロでした。

これは後日談で判明しましたが、非常にありがたい状況だったようです。

両親や家族にも転職活動する旨は事前に共有していたし、行こうとしている会社についても出来るだけ細かく説明してきたが、最初から最後まで特に反対はされなませんでした。

転職後に、社内外含めて転職相談を受ける機会が増えた際、「転職先と握手し、社内で退職の意志を上司に伝えた後に、最後の最後で実は奥さんが反対して、全て頓挫した」という事例を聞いて背筋が凍りました笑。

その人は結局転職先にも断りの連絡を入れ、社内に残る選択をしたのだが、一度離反の旗を上げた以上、当面の間は冷たい視線を感じながら社内にいることになったと聞いています。

身内の声なんか関係なく、「誰に何を言われようが、我が道を行く!」と決めている人は問題ないかもしれませんが、これから総合商社を飛び出そうと考えている人で、僕のように既に自宅も購入しており、年収も1000万円は超えている待遇から飛び出す場合、ひょんなところに反対する伏兵が潜んでいる可能性があるのでお気を付けください。

逆に言うと、友人・同僚等は何を言われようが、あくまで他人なので貴方の人生に責任を持つ訳でも、実際にダメージを与える訳ではないので、ここは除外できます。しかし身内についてはきちんとコンセンサスを取った上で話を進めることを勧めます

以上が、退職するまでの周囲の状況です。

もしまた転職する事があれば、もう少しスムーズに進められると思いますが、離職率の低い会社勤務で且つ初めての退職だと、何をやって良いか分からないし、戸惑う事も多いと思います。

でも飛び出す決意をしたなら、極力今の会社とは“円満に”、でも“決定事項で”ノンネゴ”であることはハッキリと伝えた方が良いと今回の退職交渉を経て感じたので、記事にまとめました。

最後に、これも後日談ですが、上述した下記内容について

⑶ 反対だけする上司(その後無関心)は、所詮「自分の評価が気になるだけ」。一方でどれだけ揉めて反対していた上司でも、退職後に応援してくれる上司は、今後も付き合っていける良き相談者となりうる。但し、これを退職交渉中に真意を図るのは簡単じゃない。

正直、辞めて以降、疎遠になってしまった人もいます。

でも、結果的には一番揉めて反対した上司が、今は最大の理解者で応援者になってくれているのが非常に嬉しいですね。

先日も退職して一年以上経ったけど、「最近どうよ?」と気にかけてくれて飲みに行った際に「もう上司・部下の関係じゃないから、これからは遠慮なくキャリアの相談してくれよな」と声をかけてもらえました。

次、キャリアに迷った時に相談できる大先輩ができたことは、今回の退職交渉を通して得る事のできた一番貴重な出会いだったかもしれません。

退職交渉の場面別のポイント まとめ

退職の交渉というのはノウハウを持っている人が少なく、特に初めて転職する際には大きな不安が付きまとうもの。

今回は自分の退職交渉の経験をまとめてみました。

皆さんもこれを読んで、退職時のイメージを持っていただければ幸いです。

また、今すぐでなくても「いつか転職したいな」と思っている人は「良い辞め方」をするためにも、自分のキャリアをしっかり考えておく必要がある。

いつでも「転職できる」という状態にしておけば、今の仕事にも前向きに向かい合うことができ、「いつでも辞めてやる」くらいの気持ちでいれば、挑戦しやすい。

そのためにどうやって転職活動を進めていくかというのも別の記事でまとめたので、こちらもぜひ参考に。

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