第14回目を迎えた「あなたのプランB」となりますが、今回は、バッテリーなどデジタル製品のD2Cブランドとして勢いに乗る、Anker Japanの取締役COO:猿渡さん (@endoayumu) に書いていただきました。
8月の上場したハードウェア・スタートアップの日本市場の取締役COOである猿渡さんのお話が読める貴重な機会です。
みなさん熟読必須の内容となっていますので、お楽しみください。
僕が提唱する「プランB」の大切さについてまだ記事を読んでいない人は、別の記事で説明していますのでこちらを参照ください。
プランBのすゝめプランBの形は人によって異なり、「転職」や「英語」などのスキル・資格でもあり得ます。
猿渡さんのプランBとプランAの関係性、これからの野望がよくわかり、みなさんがこれからプランBについて考えるためにとても参考になるはずです。
目次
1. 猿渡さんのキャリア
はじめまして、猿渡歩と申します(苗字の読みが変わっていますがこれで猿渡と書いてエンドと読みます)。
現在はAnkerという今年の8月の上場したハードウェア・スタートアップの日本市場の取締役COOとして勤務する傍ら、D2CやEC領域を中心に上場企業やスタートアップへのコンサルティングや顧問をしています。
ツイッターは実は2020年からスタートでしたが、この度はイシコさんにお声がけいただき、僭越ながら「あなたのプランB」を執筆させていただきました。
前職ではコンサルやPEファンドで勤務しており、専門職からスタートアップまで経験した少し変わった経歴と思うので、そのような業界のどこかにご興味ある方がいましたら少しでもご参考になれば幸いです。
2. 猿渡さんにとってのプランB
プランAをひたすら頑張る
本題に矛盾する形かもしれませんが、私はあまりプランA、プランBなどとはあまり考えておらず、お話しいただくまではあまり意識していませんでした。
というよりも自己紹介に記載の通り、一般的に労働時間が長い業界やスタートアップの事業部の立ち上げ等をしていた関係で、本業(=プランA)でかなり手一杯であり、これまで週末も資格や業務の勉強に充てていたことが多く、それ以外の”プラン”をやる時間的・精神的な余裕がなかったとも言えます。
そのため細かいことを考えていたというより、ただひたすら目の前の仕事を必死にやり成果を出す、それを繰り返してきたと思います。
新卒コンサルタントなんて知識も経験もないのでかなりのインプットが必要でしたし、2社目のファンドは元々金融出身でないのでかなりの勉強が必要でしたし、3社目で現職のAnkerでは、メーカー経験がまったくありませんのでものづくりに対する基礎もなく、メインの販売チャネルであるEコマースやデジタルマーケティングの知識もゼロでした。
そのためひたすら必要なインプットをし、期待を超えるアウトプットをひたすら出そうと食らいつく日々でした。
Ankerグループは2020年8月に上場し、初日は9,100億円を超える時価総額となりました。
そして上場に合わせて日本法人の取締役COOを拝命し、Ankerグローバル全体で最年少役員となりました。
この部分だけ切り取ると聞こえはいいのですが、ひたすらプランAを突き抜けるために必死にやっていたら、結果がついてきただけであると思っています。
私のことを学生時代から知っている人なら分かりますが、私自身は特に能力面に秀でているわけでは全くありません。
実際、中学の時に通っていた塾では定期テストの結果が全体で下から2番目とついていけずに退塾していたぐらいです。
凡人であると分かっていたからこそ、優秀な人に囲まれた環境では全力でやらないと負ける、そこで勝ちきれないといけないマインドがあったのはプラスに働いていたかもしません。
プレスリリース:Ankerグループの本社Anker Innovationsが深圳証券取引所の新興企業向け市場「創業板 (ChiNext) 」へ新規上場
プランBと過去のキャリア
私のプランBは「個人として生きていく力をつける」ことだと思っています。
具体的には私は自らの会社も経営しており、これは目に見えるプランBと言えると思います。
事業内容としては、上場企業からスタートアップまで会社のフェーズ問わず、主にD2C/EC領域で顧問をさせていただいています。
少し以前のキャリアの話に戻ります。
前段の通り、優秀な人の中で勝たないと生き残れない環境、そして負けず嫌いな性格もマッチしたことで、ひたすらプランAを突き抜けることを考えていました。
コンサルやファンド時代は周りにも優秀な方が多く「地頭の良さ世界選手権」のような場所で圧倒的に突き抜けるのは難しい、言い換えるとそれだけでは自身のブランディング、他者との差別化は難しいと感じていました。
またファンド時代には投資先の役員との会議に出る中で、理論はわかっていたとしても現場感を持って事業を語れていないなとも日々感じていました。
もちろん専門職の経験しかいなくても、圧倒的な想像力と知識、地頭の良さでそれをカバーしている方もいらっしゃいます。
ただ私はそのような天才肌でないとは早々に自覚していましたので、事業責任を現場レベルで負う立場を20代のうちに経験した方が良いと思い、当時は無名のハードウェア・スタートアップ「Anker」へ転職しました。
スタートアップのアーリーフェーズに入った方は体験された方いると思いますが、ベンチャーは想像以上に色々なものが整っていません。
入社後はパソコンを自分で買ったり、事業部門のヘッドで入ったにも関わらず、経費精算のフローを整えたりもしていました。
今でこそ4つ目の綺麗なオフィスで気鋭のスタートアップ感のあるオフィスですが、初期の頃は家賃十数万、トイレは1つ、上の階には大家さんが住んでいるような雑居ビルでした。
そういった意味では、売上、従業員数の伸びも勿論ですが、成長を肌で感じています。
Ankerの最初のオフィスは島1個しか入らず、トイレも男女兼用で1つ、鍵はカードキーでもなかった。前職の丸の内のビルと比べてかなりのギャップ。
先月引っ越した現オフィスは実は4つ目なのですが本当に成長を感じる。優秀な人材を今以上に採用していきたい!
(左)最初のオフィス (右)現オフィス pic.twitter.com/Rm7WfXq6pj
— 猿渡 歩 | Endo Ayumu (@endoayumu) August 2, 2020
Ankerの成長を感じる一方で、 イベントなどで経営者の方々とお会いすると、自分より若くして事業を成功されている方、シリアルアントレプレナーなどの方とお会いする度に、スタートアップ業界の中でも「突き抜けが足りていない」と日々焦りを感じていました。
合わせて何を自身の圧倒的な強みにしていくべきかと考えるようになりました。
そんな中で大手広告代理店の方とお話をする機会がありました。
Ankerに対し営業目的での打ち合わせでしたが、D2CやECの話をする中で私の方が詳しかったようで、逆に顧問になってくれないかという打診をいただき、お受けしたのが初めの個人での仕事でした。
D2Cというワードはここ2年間ぐらいでバズワード的になってきていますが、Ankerは創業当時からずっと採用してきた事業モデルであり、主にECを活用して短期間で事業を伸ばしてきました。
社内にいるとあまり気がつきませんでしたが、一歩引いてみると創業6期で売上100億円を達成している企業は殆どないと思いますし、そのやり方に興味がある、自社でも活用したいというニーズがあるのを理解しました。
そしてコンサルやファンド時代は会計や財務の方が専門でしたが、Anker入社後はマーケティングやセールスがメインの強みになっているのだなとその時に気がつかされました。
特にD2C/ECという分野はまだ専門家がほぼいない状況ですし、その領域で自分の強みは十分に出せると思い、当初は個人事業でスタートしていましたが現在は法人化して事業を行っています。
プランAとプランBの関係性
私にとってプランAとプランBは独立するものではないと考えています。
プランAでの過去の経験があるからプランBのきっかけになっているし、今でもプランBで色々な企業様と接することで得られる知識や経験、経営者との意見交換の機会は、私自身も勉強になっているところもありますし、そうなれば結果的にプランAにも還元ができていると思っています。
仕事が忙しい時はアウトプット中心になりがちだと思います。
「インプット x 地頭 = アウトプット」だと思っていますので、アウトプットの量と質はインプット量に連動するものと考えています。
インプットは、本を読む、資格勉強をする、といったことも体系的に学べるのでもちろん有用ですが、実践のビジネスから得られるインプットや、ネットワーキングはそれ以上に貴重です。
ここでイシコさんの言葉を改めて2つほど引用すると、
- 僕が主張する「プランB」とは、「人生における選択肢を増やす」という意味があります。
- 大切なのはプランBのオプションを行使することが目的ではなく、プランBの拡充で、今の生活をより充実させることです。
私もプランBというものを意識するだけでも選択肢の幅が広がると思いますし、そして選択肢が増えることはプライベートでもビジネスでも想像以上にメリットが大きいです。
例えば、販売チャネルや製品が増えるというのは売上拡大につながりますが、今のコロナ禍のようなことが起こり店舗の売上が下がったり、外で使うモノが売れなくなったとしても、ECや家で使うモノの取り扱いがあればリスクをヘッジできます。
またプランBの拡充で、人生が充実するというのは私も重要なポイントだと思います。
何か手軽にできる副業で資産が増え、その分趣味に使うといった小さいことからでもいいかもしれません。
またお金を稼がなくても、ボランティアを通じて得られる経験を通じて普段の生き方を変えるようなアハ体験があるかもしれません。
裏返すと、ただ盲目的に与えられた仕事をする日々をこなすだけという働き方は避けるべきだと思いますし、リスクも高くなります。
繰り返しになりますが、プランAを全力でやるだけでも見えてくるプランBの選択肢はたくさんあります。
そのため、今後はプランAもプランB(※プランAを極めるも含む)も全力でやれる人、プランAですら適当にしかやれない人、どちらかに集約されてくるのかもしれません。
3. 猿渡さんがこれから持っておきたいプランB
私のこれからのプランBは、おこがましいようですが「社会や業界に対して還元できる力をつける」ことです。
今のプランBである「個人として生きていく力をつける」というのもまだまだであると思っていますが、顧問として起用していただく企業もあり、カンファレンスでの登壇機会も増えてきているので、微力ながら還元できる部分も少しずつ増えてきていると思っています。
自分自身も引き続き成長を続けるのは勿論ですが、EC・D2Cの発展にもっと貢献していきたいですし、それにより社会や生活もより便利になることで、日本社会に対してもプラスの変化を1兆分の1%でも貢献できればと思っています。
一方でプランAを突き抜ける続けることが最優先であることは今でも変わりません。
Ankerグループのミッションは「Empowering Smarter Lives」、日本語で説明するなら「ハードウェアの力で、人々のスマートな生活を後押しする」。
充電時間が短くなればできること、ロボット掃除機があれば浮いた時間でできること、スマートプロジェクターで新しいエンターテイメント体験ができること、そういったことをAnkerグループの製品を通じて達成できると思っています。
私個人で変えられる社会的な変化は1兆分の1%かもしれませんが、Ankerグループの製品をレバレッジすれば、0.1%ぐらい変えられるかもしれません。
それを達成するために、今後も事業責任者として全力で取り組んでいきますので、今後の新製品にも是非ご期待ください。
4. まとめ
猿渡さんとは、Twitterで絡ませて頂いた当初から是非お声がけさせていただきたいと思っており、それが今回ようやく実現しました。
ある意味、誰よりもこの回を楽しみにしていた読者の一人でもあります笑。
(僕も含めきっと多くの人が)猿渡さんのキャリアだけを拝見すると、一見きらびやかで羨ましく感じますが、その裏には「目の前のことを必死にやり遂げて結果を出す」という地道な行動の繰り返しに裏打ちされていることが改めて分かりました。
(キャリアにウルトラCはなく、一歩一歩アウトプットの質を高めて、期待を超えていくことでしか、高みを目指す方法はないですね)
さて、「プランB」という観点で、猿渡さんのお言葉をお借りしたい一文がありました。
「私にとってプランAとプランBは独立するものではないと考えています。」
まだまだ猿渡さんのようなプランBを描けている訳ではないので、コメントするのもおこがましいのですが、AとBは補完関係にあり、A or BではなくA & Bの思考であるべきだと常日頃感じています。
Aを頑張った先にBがあるのであって、決してAを蔑ろにした先にBがある訳ではないことを肝に銘じておきたいものです。
⋆猿渡さんが「プランAをひたすら頑張る」と仰っていますが、実際はその頑張った先に「顧問になってほしい」というお声がけで個人のお仕事(プランB)が始まっているのもその良い事例ですね。
余談ですが、僕自身も、個人で変えられる社会的な変化は10兆分の1%くらいかもしれませんが、この「あなたのプランB」というステキな方たちのプランBをお届けすることで、0.01%でも変えられれば嬉しいです。(猿渡さん、パクってしまいすいません笑)
これからも同世代の星として、先頭を突っ走っていただき、我々も猿渡さんに負けじと食らいついていきたいと思います。
まだお会いできておりませんが、イチAnkerファンとして、イチ猿渡さんのファンとして、いつかお会いできるのを楽しみにしております!!
それでは末筆となりますが、この度はご寄稿いただき重ねてお礼申し上げます。
5. この記事を書いた人
猿渡 歩 / Endo Ayumu
アンカー・ジャパン株式会社 取締役COO | EAコンサルティング合同会社 Founder&CEO
Deloitteにてコンサルティング業務やIPO支援に従事後、PEファンド日本産業パートナーズにてプライベート・エクイティ投資業務に携わる。アンカー・ジャパンの事業部門創設より参画し、同部門を統括。チャージング関連製品やオーディオ製品含めて参入したほぼ全てのカテゴリでオンラインシェア1位を実現し、創業6年目で売上100億円を達成。2017年に執行役員、2020年8月より現職。また多くのEC / D2C運営企業の顧問も務める。
Twitter: @endoayumu
EA Consulting: https://www.endoayumu.com/
D2CやEC領域を中心に、上場企業からスタートアップまで幅広くコンサルティングや顧問等。
Anker Japan: https://www.ankerjapan.com/
7. あなたのプランB
この記事を読んでわかるように、成功している人の多くはプランBを常に考えて行動しています。
強力なプランBがあることでプランAはより輝きます。
副業(プランB)という副収入があるから本業(プランA)の選び方が変わる、転職の選択肢があるから本業でも挑戦できる、英語を勉強すれば仕事、生活の幅が広がる。
自分に最適なプランBを考えて、人生をより豊かにする生き方を見つけましょう。
「プランBのメリットとは何か?」「どうやってプランBを考えて良いかわからない」という人は、まず僕が説くプランBを読んでみてください。
プランBのすゝめ
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